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FELLOW ORCHESTRA
フェローオーケストラ 第6回チャリティコンサート

[ 曲目解説 ]

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小倉 朗(Roh Ogura、1916-1990)/​
オーケストラのためのブルレスク

最初の曲は、小倉 朗が1959年に、「日本風な旋律で景気のいいオーケストラ曲を」というNHKの注文に応じて書いた、どこか賑やかな神楽の笛や太鼓に通じる曲です。

小倉 朗 ってどんな人?

 小倉 朗は、福岡県の門司で、鉄道技師の父と、一代で実業家に出世した家庭の長女だった母の間に生まれ、生後わずか3か月で、母の妹、つまり叔母のところに養子に出されます。音楽への興味、情熱は小学生の時代から強く持っていたようです。それは、結婚などせずに外国に行って音楽を勉強したい、と思っていた養母から受け継いだものかもしれません。この養母は、彼が滅茶苦茶な青年時代を過ごす間も、母子二人の生活の中で家財道具を切り売りしながら、見限らずに彼を支えてくれました。彼の経歴で印象的なのは、早稲田第一高等学院 (1933年)、東洋音楽学校 (1934年)、明治大学文芸科 (1936年)と中退の連続で、小・中学校以外は、卒業した学校がないことです。どうやって、職業作曲家として自立するための知識・素養を身につけたのでしょうか。彼には学校教育の枠の外で、個人的に師事した4人の教師がいました。菅原 明朗、深井 史郎、池内 友次郎、そしてヨーゼフ・ローゼンシュトックです。特にローゼンシュトックから受けたベートーヴェンの9つの交響曲の指揮のレッスンによって、彼の音楽理解の背骨が作られたようです。師から学び取れるものと、自らが探しているものをとことん追求し、クラシックの作品の(本人が「模写」と呼ぶ)徹底的な研究を含め、自ら選んだ作曲の道をひたすら歩み続けたことに、深い畏敬の念を禁じ得ません。

ブルレスクってどんな曲?

 この曲には見慣れない題名がついています。これは、「ふざける、冗談を言う」という意味のイタリア語“burlare”からフランス語に入り、後に英語でも使われるようになった言葉です。音楽の世界では18世紀頃から、ピアノや他の楽器による演奏を前提とした、「冗談のような、ユーモアにあふれた」曲の意味で使われています。あの大作曲家バッハもブルレスカという曲 (作品番号BWV827) を残しています。

 皆さんが聴く小倉 朗のブルレスクは、約3分の短い曲です。舞台に乗っているのは、ブラームスやチャイコフスキーといった西洋音楽の有名作曲家の作品を聴くときに見慣れた楽器に、ハープとピアノが加わったオーケストラです。が、耳に入ってくる音楽は、どこかの神社のお祭りから聴こえてくるお囃子のように聴こえませんか?

 譜面上は、全曲が1小節に四分音符が2つ入っている2/4拍子で書かれていて、速さの指示は Allegro vivo(颯爽と軽快に=要するに「かっこよく速く」)♩=120(1分間に120拍)。全部で198小節あるこの曲は、1か所だけ、4小節かけて急にブレーキがかかる以外は、速さ♩=120で通されます。譜面はずっと2/4拍子ですが、イチニ、イチニだけではありません。場所によって、8分音符のイチニ、イチニサン 2+3、あるいはイチニサン、イチニサン3+3が聴こえてくることもあるはずです。

ブルレスクってどんな曲?おまけ

 この曲を聴いて、「あれ、どこかで聴いたことがあるような」と感じる方がいても、不思議ではありません。戦争が終わり、ようやく海外の情報が入ってくるようになった中で、彼は民族音楽をクラシックに取り入れたバルトークの作品に影響を受けました。決して模倣ということではなく、民族音楽の特性をどう捉えるか、また民族の固有楽器による演奏や音のイメージを、西洋音楽に使われる楽器にどう転写するかをバルトークの譜面を睨みながら自分のものにしたのだろうと想像されます。

小倉 朗ってどんな人? おまけ

小倉 朗は、文章を書くのが上手な人でもありました。自伝(『北風と太陽:自伝』、新潮社、1974)だけでなく、音楽と日本語、日本人にとっての音・音楽に関する考察(『日本の耳』、岩波書店、1977)を書いています。

小倉 朗は1990年に妻と二人の娘を残して亡くなりましたが、孫の山中まりえさんは、ヴィオラ奏者として現在ドイツ北部のキールという町の歌劇場で活躍しています。筆者の友人でもある彼女に彼が好きだったこと/ものは何だったか尋ねたところ、こんなことを教えてくれました。

「車の運転がとても好きだった。その理由は『子どもの頃、ぐずると親が車で近所を走ってくれた。車に揺られていると眠ってしまった。車に乗ることは自分にとっては子守唄のようだったから』と」

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